大きい花は魅力的(ハチにとっての話)

※本記事で紹介している論文はオープンアクセス、かつ、ジャーナルが二次利用可としているものです。

 

紹介論文:

「Smith‐Flores, A. S., Herrera‐Guevara, I. A., & Powell, L. J. (2024). Infants expect friends, but not rivals, to be happy for each other when they succeed. Developmental Science, 27, e13423.」

 

血縁者を援助することで、包括適応度を高めようとする血縁淘汰は広い動物種でみられます。本研究では、植物にも血縁淘汰があることを示しました。ハチ、チョウ、ガ、甲虫、ハチドリなどを送粉者として利用する植物は多くいます。これらの送粉者に送粉を頼る植物は、蜜を提供することで、送粉者の身体に花粉をつけ受粉にいたるという総理共生関係にあります。すくなくとも送粉者が少ない状況では、送粉者は大きくて花をたくさんつけて植物に誘引されます。また、一つの花が送粉者を引き付けると、周りの植物も訪問確率があがるので、恩恵を受けます。この研究では、ある植物は、血縁者がいるときには、花への投資を増やし、他個体の利益になるような振る舞いを見せました。

 

アブラナ科の一種であるMoricandia moricandioidesをタネから育て、ある程度の大きさになった時点で植木鉢に植え替えました。その際に、一人で植える条件(隣人個体なし条件)、3人の他個体がいる条件(隣人個体3人条件)、6人の他個体がいる条件(隣人個体6人条件)を設けました。さらに、隣人個体がいる条件では、隣人個体は、母親が同じ個体、すなわち、血縁個体もしくは非血縁個体で構成されていました。一つの植木鉢の土は1.5リットルでした。

 

開花後26日経ってから、刈り取り、全体の重さ、花の重さを測定しました。一旦、灰色の丸は無視してください。赤色がひとり条件、◯が3人隣人条件、□が6人隣人条件です。さらに、オレンジが血縁個体条件、青色が非血縁個体条件です。すべての指標において、青よりも黄色が上回っています(統計的な差は出ていませんし、条件内の比較でも有意か有意でないかは一貫していませんが……)。また、aのグラフ、広告投資に注目すると、隣人が6人いて、さらに、その6人が血縁のときに、一番花に投資していたことが分かりました。

 

 

次に、利用できた資源の量による効果を見るために、これまでの条件では1.5リットルだった土の量を、それを0.375リットル(1.5 / 4)もしくは0.214リットル(1.5 / 7)としました。これは、3人隣人条件と6人隣人条件のそれぞれで1個体が使える土の量に相当します。

 

その結果が、灰色になります。◯が1.5 / 4条件、□が1.5 / 7条件です。花の数は、影響を受けるようで、使える土の量が少ないほど、つける花の数も少なくなっています。

 

一番注目すべき結果は、血縁者に囲まれていて、さらにその人数が多いときに、花への投資が増えたというこです。そして、これは使える土の量に依存しませんでした。

 

花はコストのかかる形質であり、デイジーで、花を取り除くと、タネの生産と質が上がるという報告があります。

 

植物はどういった方法で、血縁を認識しているのでしょうか。興味が続きますね。